えびでんす

ンデッ デッッデッ

さがしもの

ここ半年くらいよくお世話になっていた人が、鬱病か若年性アルツハイマーか、病気の症状に詳しくないのでわからないのですが病気になってしまいました。確かに病気です。

ここ一ヶ月くらい、疲労からうずくまってしまったり立っているのに眠気が収まらなかったり、気性が荒くなったり逆にやけに戯けたり、といったことが数回あって心配していましたが、先日ついに、酔っているわけでもないのに視点が定まらない、書いてある字がうまく認識できない、言葉を発するのに時間がかかり話す内容も支離滅裂で会話ができないといった、はたから見てもとても普通ではないとわかる症状が出ていました。壊れていたんです。


明らかにそれは病気の症状なのに、私のまわりに、それが病気であるときちんとわかってくれる人はいませんでした。高圧的な態度を取ることでその人をきちんと動かそうとする人、もしくは怖がって遠ざけようとする人がいました。私も立場上その場でその人を完全に擁護することができず、フォローする、話を理解させるためにできるだけ言葉を噛み砕いて会話をする、といったことくらいしかできませんでした。


すわった目でじっとこちらを見るその人に「なにかさがしものですか?」と訊くと、「さがしものはなんですか?」と返されました。有名な曲です。おずおず「見つけにくいものですか?」と返してみると、「へへへ、見つけにくいものですか」と復唱。「鞄の中も、何でしたっけね、あまりちゃんと覚えていないです」と私が言うと、「へへへ、ぼくもねえ、そんなにねえ、覚えてない」


それがその人と最後にした会話です。本当にお世話になったので、これっきりで最後にしたくはないのですが、もう私には会うすべがありません。

症状が出てしまうまでもたくさん考えてできるだけ動きましたが、何もできませんでした。私は接点がなくなってしまえばもう会うこともないから、そこでおしまいで、その人との関係もリセットされて、でも私のいないところでその人は生きていて、その人の幸せを望むことしかできない